【驚愕】レトルト食品の功罪

食品の加工技術
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レトルト食品とは

 レトルトとは、もともとレトルト殺菌釜という設備の名称です。レトルト殺菌に使用される袋をレトルトパウチ、殺菌された食品をレトルト食品と呼びます。レトルトパウチによる本格的な商業利用は1969年発売のボンカレーが最初です。殺菌温度120℃、殺菌時間30~60分が最も一般的な加工条件です。温度を上げると殺菌時間は飛躍的に短くなります。枯草菌など芽胞を形成する細菌は、死滅させるのに100℃にて400分かかりますが、120℃なら4分となり、味や香りの熱による劣化も抑えられます。レトルト殺菌済の製品は、無菌状態のため常温保管が可能となります。

 実際の加工事例として、レトルト白がゆは、お米と水のみを使用しています。レトルトパウチ袋にお米と水をそれぞれ充填し、シール機で袋を溶着、トレーに袋を並べ、レトルト殺菌釜に入れ、殺菌温度120℃、殺菌時間30~60分の条件を設定し、ボイラーの蒸気を熱源として加熱し、調理と殺菌が始まります。製品化に至るまでにお米と水の分量や殺菌条件を調整し、味やお米からのでんぷんの溶出による物性のチェック、殺菌条件に問題がないかを確認します。殺菌が不十分であると細菌が袋の中で増殖をはじめ、呼吸により二酸化炭素などが発生し、膨らんで袋が破裂します。そのため製品化前に少なくとも数十回の試作を行うことになります。

レトルト食品の歴史

 レトルト食品の歴史は、第二次大戦後の1950年代に米軍が缶詰にかわる軍用携帯食として開発したところまで遡ります。その後、アポロ計画で宇宙食に採用されたことで多くの食品メーカーが商用での使用を検討しました。

 日本では1969年に大塚食品が、世界初の一般向けレトルト食品としてボンカレーを発売しました。昨今では大小さまざまな企業がレトルト食品を生産しています。

レトルト食品の生産量と種類

 日本缶詰びん詰レトルト食品協会の2018年の国内生産数量統計によるとレトルト食品の生産量トップは、161,711トンのカレーとなります。レトルト食品全体の43%を占めています。2番目は50,085トンのつゆ・たれ、3番目は44,275トンの料理用調味ソース、4番目は31,665トンのパスタソース、5番目は18,605トンのハンバーグなどの食肉野菜混合煮となります。その他にスープ類やおかゆ、白飯などの飯類、釜飯の素、麻婆豆腐の素、サバの味噌煮などの水産類、シチュー、ハヤシが続きます。

 レトルト食品は、製造工程上、向き不向きがあります。カレーやシチュー、ハヤシなどの煮込み料理には最適ですが、逆に炒飯などの炒め物やホワイトソース、緑黄色野菜は不得手です。これは120℃で30~60分加圧加熱することで、食感や香り、色が劣化するためです。

レトルト食品のメリットとデメリット

 スーパーやコンビニで目にするレトルト食品は、化粧箱に入れられたレトルトパウチ袋が主流で、もっとも多く販売されています。次が鍋の素をはじめとしたスタンディングパウチ袋となります。個食の場合、一食200g前後で、製品価格は100~900円台となります。レトルト食品は、以下のような特徴があります。

メリット

1 加圧加熱殺菌により保存料を必要としません。

2 常温で1年以上の長期間保存が可能です。

3 短時間で加熱調理ができます。

デメリット

1 120℃で30~60分加圧加熱するため、家庭での調理に比べて熱に弱いビタミンCなどの栄養素が減少する可能性があります。

2 レトルトの調味ソースやパスタソースの完成度が高いため、自身で味を組み立てる技術が蓄積されません。

レトルト食品の製造工程

 レトルト食品の代表的な製品であるレトルトカレーの簡単な製造工程を紹介します。

1 蒸気で加熱するニーダーという業務用調理釜あるいは直火釜で玉ねぎやニンジン、ジャガイモなどの野菜や肉を個別に炒めます。
2 直火釜で油脂やコリアンダー、クミン、ターメリック、ペッパーなどの香辛料、調味料、小麦粉、水を加熱混合し、カレールーを作ります。
3 レトルトパウチ袋に野菜、肉、ルーを充填し、レトルト殺菌釜にて120℃で30~60分加圧加熱殺菌します。
4 2週間程倉庫に保管し、風味のチェックと確実に殺菌されていることを確認します。
5 箱に詰め、出荷します。

まとめ

 レトルト食品は、レトルト殺菌釜で120℃、30~60分の加圧加熱条件下で殺菌された食品です。カレーをはじめ様々なラインアップがあり、食生活を豊かにしてくれます。メリットは、保存料不要、常温で1年以上保存性、喫食時の簡便性と加熱調理の時間短縮が挙げられます。一方で、家庭での調理に比べて熱に弱いビタミンCなどの栄養素が減少する可能性があること、調味ソースやパスタソースの完成度が高いため、自身で味を組み立てる技術が蓄積しないことがデメリットとなります。生活者の様々なニーズに応えることで消費が伸び、いまや一般の家庭では欠かせない食品のひとつとなっています。

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