【有史以前から続く】酵母の利用

食品の加工技術
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 酵母は伝統的に、また今日でも技術的並びに工業的観点から見ると重要な役割を演じています。多くの属、種の酵母が自然界に存在し、その多くが工業的に利用されていますが、応用科学的に最も重要な酵母は、Saccharomyces cerevisiae(ビール酵母、パン酵母)菌株です。これらは、ワインやビールの製造及びパンの発酵に用いられています。

 ワインの製造とは、ぶどう果汁の可溶化糖であるぶどう糖とフルクトースをCO2及びエチルアルコールへ発酵することです。ぶどうを収穫した後、押し潰して粗果汁、すなわちぶどう汁をつくります。世界の多くの地方では、ぶどう表面の混合酵母フローラが接種菌として働きます。そのような自然発酵では、酵母集団相が複雑に連続して変化し、醸造の後期にはいわゆる真性ワイン酵母のSaccharomyces cerevisiae var. ellipsoideusが優占するようになります。満足できるような製品をつくるためには、発酵後の新しいワインを澄ませ、安定化し、熟成しなければなりません。この工程は何カ月もかかり、高品質の赤ワインとなると何年もかかります。

 全く発酵性糖を含まない穀物からつくられるのがビールです。穀物のでんぷんは、酵母による発酵の前に発酵性糖であるマルトース及びぶどう糖へ分解されなければなりません。大麦の場合には、それ自身のでんぷん分解酵素が用いられます。大麦の種子は、ほとんどあるいは全くでんぷん分解酵素を含んでいませんが、発芽に際して大量のでんぷん分解酵素がつくられます。ビールの発酵では、必ず以前の発酵で得られた特殊な酵母菌株を接種します。発酵は低温で5~10日間行われます。良好なビール酵母は、何世紀にもわたり開発されたもので、自然界には見いだされません。

 酵母によるアルコール発酵は、ふっくらとしたパンの製造には不可欠な工程です。小麦粉は発酵の基質となる遊離糖をほとんど含んでいませんが、でんぷん分解酵素が存在しており、発酵を起こすのに十分な糖をつくります。糖は酵母によって急速に発酵されます。生じたCO2は練った粉の中に閉じ込められて、粉を膨らませる一方、アルコールはパンを焼く際に追い出されます。

酵母の利用

 酵母は伝統的に、また今日でも技術的並びに工業的観点から見ると重要な役割を演じています。多くの属、種の酵母が自然界に存在し、その多くが工業的に利用されていますが、応用科学的に最も重要な酵母は、Saccharomyces cerevisiae(ビール酵母、パン酵母)菌株です。これらは、ワインやビールの製造及びパンの発酵に用いられています。

 アルコール飲料の製造は、初期文明の時代にすでに十分確立されており、ワイン製造の起源は神のお告げによって発見されたとする神話がどこにでもありました。この事実はワイン製造技術の始まりが先史時代にまで遡ることを物語っています。パンの発酵剤としての酵母の使用は、約6,000年前エジプトではじまり、ここからほかの西洋世界に徐々に広がっていきました。

 アルコールは蒸留することができ、中国またはアラブ世界で発見されました。蒸留所は17世紀の中頃、ヨーロッパに現れました。最初アルコールは人が飲むためだけに使用されましたが、産業革命とともに溶媒及び化学原材料としてのアルコール需要が生じ、蒸留産業は急速に成長しました。

ワインの製造

 ワインの製造とは、ぶどう果汁の可溶化糖であるぶどう糖とフルクトースをCO2及びエチルアルコールへ発酵することです。ぶどうを収穫した後、押し潰して粗果汁、すなわちぶどう汁をつくります。これは重量比で10~25%の糖を含む強い酸性の液体です。

 世界の多くの地方では、ぶどう表面の混合酵母フローラが接種菌として働きます。そのような自然発酵では、酵母集団相が複雑に連続して変化し、醸造の後期にはいわゆる真性ワイン酵母のSaccharomyces cerevisiae var. ellipsoideusが優占するようになります。カリフォルニアでは、ぶどう汁をはじめに二酸化硫黄で処理し、自然酵母フローラをほとんど排除した後に好みのワイン酵母菌株を接種します。発酵は旺盛に進行し、通常数日で完了します。赤ワインをつくる場合は、ぶどう汁から皮を分けず、発酵の間に生じたアルコールが色素を抽出するので、ワインが色づきます。

 満足できるような製品をつくるためには、発酵後の新しいワインを澄ませ、安定化し、熟成しなければなりません。この工程は何カ月もかかり、高品質の赤ワインとなると何年もかかります。はじめの年の間に多くのワインは、種々の乳酸菌(PediococcusまたはLactobacillus)による2回目の自然発酵であるリンゴ酸-乳酸発酵を受けます。この発酵は、ぶどうに存在する2つの主要な有機酸のひとつであるリンゴ酸を乳酸とCO2とに変換し、これによってジカルボン酸がモノカルボン酸になることで、ワインの酸度が低下します。

 発砲ワインでは、瓶または大型槽の中の加圧下で、添加した糖を消費する2次アルコール発酵を行わせます。このようにして生じたCO2によって、ワインは炭酸を含むようになります。

 ワインは高いアルコール含量と低いpH(~3.0)のために、大部分の微生物が生育するための基質としては不適です。

ビールの醸造

 ぶどうその他の果汁とは異なり、全く発酵性糖を含まない穀物からつくられるのがビールです。穀物のでんぷんは、酵母による発酵の前に発酵性糖であるマルトース及びぶどう糖へ分解されなければなりません。

 伝統的にビール製造に用いられた主要な穀類は、欧州においては大麦、東洋においては米でした。でんぷん糖化に対する異なる方法が、それぞれ見いだされています。大麦の場合には、それ自身のでんぷん分解酵素が用いられます。大麦の種子は、ほとんどあるいは全くでんぷん分解酵素を含んでいませんが、発芽に際して大量のでんぷん分解酵素がつくられます。したがって、大麦を湿らせ、発芽させ、さらに乾燥して次の利用のために貯蔵します。麦芽と呼ばれる乾燥発芽大麦は、乾燥中に高い温度にさらされ、色が黒ずみ、未処理大麦種子よりも強い風味を持ちます。大麦のでんぷんは、この麦芽処理過程でほとんど変化を受けずに残ります。

 ホップを麦芽汁に加えると、可溶性の樹脂状物質が抽出され、これがビールの特徴的な苦みを与えるとともに最近の生育を抑える抗菌剤としても作用します。

 ワインとは対照的にビールの発酵では、必ず以前の発酵で得られた特殊な酵母菌株を接種します。発酵は低温で5~10日間行われます。良好なビール酵母は、何世紀にもわたり開発されたもので、自然界には見いだされません。

 ビール酵母は、上面酵母及び下面酵母として知られる2群に分けられます。上面酵母は、活発な発酵菌で、比較的高い20℃で最もよく発酵します。イギリスのエールのような高アルコール含量のビールをつくるときに用いられます。下面酵母は、遅い発酵菌であり、12~15℃で最もよく発酵します。アメリカでつくられる低アルコール含量の軽いビールで用いられます。

パンの製造

 酵母によるアルコール発酵は、ふっくらとしたパンの製造には不可欠な工程です。小麦粉に水を加えて酵母と混ぜ、温かい場所に数時間放置します。小麦粉は発酵の基質となる遊離糖をほとんど含んでいませんが、でんぷん分解酵素が存在しており、発酵を起こすのに十分な糖をつくります。

 糖は酵母によって急速に発酵されます。生じたCO2は練った粉の中に閉じ込められて、粉を膨らませる一方、アルコールはパンを焼く際に追い出されます。

 今日、酵母はパンメーカーの需要に応じるため、企業的に大量生産されています。

まとめ

 酵母は伝統的に、また今日でも技術的並びに工業的観点から見ると重要な役割を演じています。多くの属、種の酵母が自然界に存在し、その多くが工業的に利用されていますが、応用科学的に最も重要な酵母は、Saccharomyces cerevisiae(ビール酵母、パン酵母)菌株です。これらは、ワインやビールの製造及びパンの発酵に用いられています。

 ワインの製造とは、ぶどう果汁の可溶化糖であるぶどう糖とフルクトースをCO2及びエチルアルコールへ発酵することです。ぶどうを収穫した後、押し潰して粗果汁、すなわちぶどう汁をつくります。世界の多くの地方では、ぶどう表面の混合酵母フローラが接種菌として働きます。そのような自然発酵では、酵母集団相が複雑に連続して変化し、醸造の後期にはいわゆる真性ワイン酵母のSaccharomyces cerevisiae var. ellipsoideusが優占するようになります。満足できるような製品をつくるためには、発酵後の新しいワインを澄ませ、安定化し、熟成しなければなりません。この工程は何カ月もかかり、高品質の赤ワインとなると何年もかかります。

 全く発酵性糖を含まない穀物からつくられるのがビールです。穀物のでんぷんは、酵母による発酵の前に発酵性糖であるマルトース及びぶどう糖へ分解されなければなりません。大麦の場合には、それ自身のでんぷん分解酵素が用いられます。大麦の種子は、ほとんどあるいは全くでんぷん分解酵素を含んでいませんが、発芽に際して大量のでんぷん分解酵素がつくられます。ビールの発酵では、必ず以前の発酵で得られた特殊な酵母菌株を接種します。発酵は低温で5~10日間行われます。良好なビール酵母は、何世紀にもわたり開発されたもので、自然界には見いだされません。

 酵母によるアルコール発酵は、ふっくらとしたパンの製造には不可欠な工程です。小麦粉は発酵の基質となる遊離糖をほとんど含んでいませんが、でんぷん分解酵素が存在しており、発酵を起こすのに十分な糖をつくります。糖は酵母によって急速に発酵されます。生じたCO2は練った粉の中に閉じ込められて、粉を膨らませる一方、アルコールはパンを焼く際に追い出されます。

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