【生化学】代謝とエネルギー

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 地球上の生物のエネルギーの究極的な源は太陽です。光合成生物が二酸化炭素を細胞構成物質であるたんぱく質、糖質、脂質、核酸、ビタミン、補酵素などに変換するために太陽光線のエネルギーが使われています。

 動物が食べた動植物を消費すること、植物が光合成をするときの諸反応を代謝と言います。細胞の中では、合成と分解が同時に行われ、ある化合物の分解で得られるエネルギーが、ほかの成分の合成に使用されます。エネルギー代謝とは、ある化合物が酵素反応で分解され、数種の高エネルギー化合物を生成し、それがいろいろな目的に使われることを指します。

 エネルギー代謝の中心は、ATP(アデノシン3リン酸)-ADP(アデノシン2リン酸)系です。ADPは、代謝過程で生じる高エネルギー化合物からリン酸基を受け取って、ATPになります。このATPがいろいろな合成反応に使用されます。

 物質Aの持つ総自由エネルギーを測ることはできませんが、物質Aが物質Bに変化する場合、両者の自由エネルギーの差(ΔG)を論じることはできます。これは物質Aが物質Bに変わるとき取り出せる最大のエネルギー量です。自発的に進む反応では、自由エネルギーは減少します。反対にΔGが正の反応は、何らかの方法でエネルギーを供給しなければ起こりません。ΔGが負の反応を発エルゴン反応、ΔGが正の反応を吸エルゴン反応と言います。

 ある反応の速度を決めるのは、その反応の活性化エネルギーです。物質Aが物質Bになるためには、エネルギーを消費しなければなりません。そのときに必要なエネルギー、つまり活性化エネルギーが小さければ、反応は容易に進みます。活性化エネルギーが大きいと反応はほとんど進まず、これを乗り越えるにはエネルギーを与える必要があります。酵素を含め、触媒はこの活性化エネルギーを下げ、反応の進行を助けます。

 生物は、吸エルゴン反応と発エルゴン反応を組み合わせる共通の反応物質として、ある化合物が繰り返し使われます。この化合物はATP(アデノシン3リン酸)で、高エネルギー化合物のひとつです。高エネルギー化合物とは、加水分解したときに大きな自由エネルギーの減少を起こすものを言います。高エネルギー化合物を加水分解するとき、自由エネルギーが大幅に減少するのは、加水分解産物の方がかなり安定だからです。

代謝

 地球上の生物のエネルギーの究極的な源は太陽です。光合成生物が二酸化炭素を細胞構成物質であるたんぱく質、糖質、脂質、核酸、ビタミン、補酵素などに変換するために太陽光線のエネルギーが使われています。糖質や脂質は非光合成生物である動物の成長、発育のエネルギー源となります。動物がつくれない一部のアミノ酸、脂肪酸、ビタミンなどの化合物も高等植物などの光合成生物に依存します。

 動物が食べた動植物を消費すること、植物が光合成をするときの諸反応を代謝と言います。細胞成分の化学反応を総括して中間代謝と言います。細胞の中では、合成と分解が同時に行われ、ある化合物の分解で得られるエネルギーが、ほかの成分の合成に使用されます。エネルギー代謝とは、ある化合物が酵素反応で分解され、数種の高エネルギー化合物を生成し、それがいろいろな目的に使われることを指します。

 エネルギー代謝の中心は、ATP(アデノシン3リン酸)-ADP(アデノシン2リン酸)系です。ADPは、代謝過程で生じる高エネルギー化合物からリン酸基を受け取って、ATPになります。このATPがいろいろな合成反応に使用され、さらに運動、分泌、吸収、伝導などの生理活性のエネルギー源となります。このときにATPはADPに戻ります。

自由エネルギー

 自由エネルギー(G)は、熱力学の概念で生化学でも利用されます。物質Aの持つ総自由エネルギーを測ることはできませんが、物質Aが物質Bに変化する場合、両者の自由エネルギーの差(ΔG)を論じることはできます。

 これは物質Aが物質Bに変わるとき取り出せる最大のエネルギー量です。物質Bの自由エネルギーが、出発物質Aの自由エネルギーより小さければΔGは負となります。逆に物質Bが物質Aに変化すれば、自由エネルギーは増大します。すなわち、ΔGは正となります。自発的に進む反応では、自由エネルギーは減少します。反対にΔGが正の反応は、何らかの方法でエネルギーを供給しなければ起こりません。ΔGが負の反応を発エルゴン反応、ΔGが正の反応を吸エルゴン反応と言います。

 ΔGが負であることとその反応の速度とは、関係がありません。ぶどう糖は酸素によって酸化され、二酸化炭素になります。

 C6H12O6+6O2→6CO2+6H2O

 この反応のΔGは、ぶどう糖1molあたりおおよそ−686kcalとなり、非常に大きな負の値ですが、ΔGの大きさと反応速度には関係がありません。触媒があれば、ぶどう糖の酸化は数秒で起こり、通常生体では数分ないし数時間で進行します。しかし、ぶどう糖を室温で空気にさらし、何年も放置しても酸化は起こりません。

 ある反応の速度を決めるのは、その反応の活性化エネルギーです。物質Aが物質Bになるためには、エネルギーを消費しなければなりません。そのときに必要なエネルギー、つまり活性化エネルギーが小さければ、反応は容易に進みます。活性化エネルギーが大きいと反応はほとんど進まず、これを乗り越えるにはエネルギーを与える必要があります。酵素を含め、触媒はこの活性化エネルギーを下げ、反応の進行を助けます。

 反応の自由エネルギー変化ΔGと熱力学的性質の間には関係があります。

 ΔG=ΔH-TΔS

 ここでΔHは定圧で反応が進むときのエンタルピー変化です。エンタルピーは、物質の発熱吸熱にかかわる状態量です。等圧条件下にある系が発熱して外部に熱を出すとエンタルピーが下がり、吸熱して外部より熱を受け取るとエンタルピーが上がります。ΔSはエントロピー変化です。エントロピーとは、系の乱雑さ、系の分子の秩序に関する量です。つまり、何をすることができて、何をすることができないかをその大小で表すような量です。Tは絶対温度を表します。物質Aや物質BのHとSの絶対量を測るのは困難ですが、物質Aが物質Bに変化するときの差は測定できます。ΔHは熱量を定圧で測定するカロリーメーター(熱量計)で測ります。物質Aより物質Bのエントロピーが大きければ、TΔSは正となり、ΔGは負の値となります。

高エネルギー化合物

 生物は、吸エルゴン反応と発エルゴン反応を組み合わせる共通の反応物質として、ある化合物が繰り返し使われます。この化合物はATP(アデノシン3リン酸)で、高エネルギー化合物のひとつです。

 高エネルギー化合物とは、加水分解したときに大きな自由エネルギーの減少を起こすものを言います。ATPが加水分解してADP(アデノシン2リン酸)となった場合、pH7.0でのΔGは−7.3kcal/molで、これはぶどう糖6リン酸の加水分解のΔGの−3.3kcal/molなどよりかなり大きい値です。

 高エネルギー化合物を加水分解するとき、自由エネルギーが大幅に減少するのは、加水分解産物の方がかなり安定だからです。すなわち、高エネルギー化合物の結合が静電気的な力で相反発しており、生成物がイオン化して安定化、生成物が異性化して安定化、生成物が共鳴により安定化するためです。

 ATP内のリン酸構造が重要で、リン原子(P)と酸素原子(O)によるP=O結合の電子は、電気陰性度の大きい酸素原子に引き付けられる傾向があります。そこで酸素原子は少し負(δ−)にリン原子はその分だけ正(δ+)に荷電します。こうして、ATPやADPのリン酸では隣同士のリン酸原子が正の荷電を帯びるので、この静電気的反発に逆らって結合を維持するには、分子がそれだけ余分に内部エネルギーを持つことになります。

 加水分解でリン酸の結合が切れるとそのエネルギーが遊離します。これが加水分解のΔGを大きな負の値にする原因のひとつです。

まとめ

 地球上の生物のエネルギーの究極的な源は太陽です。光合成生物が二酸化炭素を細胞構成物質であるたんぱく質、糖質、脂質、核酸、ビタミン、補酵素などに変換するために太陽光線のエネルギーが使われています。

 動物が食べた動植物を消費すること、植物が光合成をするときの諸反応を代謝と言います。細胞の中では、合成と分解が同時に行われ、ある化合物の分解で得られるエネルギーが、ほかの成分の合成に使用されます。エネルギー代謝とは、ある化合物が酵素反応で分解され、数種の高エネルギー化合物を生成し、それがいろいろな目的に使われることを指します。

 エネルギー代謝の中心は、ATP(アデノシン3リン酸)-ADP(アデノシン2リン酸)系です。ADPは、代謝過程で生じる高エネルギー化合物からリン酸基を受け取って、ATPになります。このATPがいろいろな合成反応に使用されます。

 物質Aの持つ総自由エネルギーを測ることはできませんが、物質Aが物質Bに変化する場合、両者の自由エネルギーの差(ΔG)を論じることはできます。これは物質Aが物質Bに変わるとき取り出せる最大のエネルギー量です。自発的に進む反応では、自由エネルギーは減少します。反対にΔGが正の反応は、何らかの方法でエネルギーを供給しなければ起こりません。ΔGが負の反応を発エルゴン反応、ΔGが正の反応を吸エルゴン反応と言います。

 ある反応の速度を決めるのは、その反応の活性化エネルギーです。物質Aが物質Bになるためには、エネルギーを消費しなければなりません。そのときに必要なエネルギー、つまり活性化エネルギーが小さければ、反応は容易に進みます。活性化エネルギーが大きいと反応はほとんど進まず、これを乗り越えるにはエネルギーを与える必要があります。酵素を含め、触媒はこの活性化エネルギーを下げ、反応の進行を助けます。

 生物は、吸エルゴン反応と発エルゴン反応を組み合わせる共通の反応物質として、ある化合物が繰り返し使われます。この化合物はATP(アデノシン3リン酸)で、高エネルギー化合物のひとつです。高エネルギー化合物とは、加水分解したときに大きな自由エネルギーの減少を起こすものを言います。高エネルギー化合物を加水分解するとき、自由エネルギーが大幅に減少するのは、加水分解産物の方がかなり安定だからです。

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