【不完全な分解】ぶどう糖が代謝される解糖系

食品の成分
この記事は約8分で読めます。

 糖質は生物の主なエネルギー源で、人や家畜、野生動物の主な糖源は穀物でんぷん、すなわち光合成でつくられる植物性多糖です。植物は、糖がたくさんできるとでんぷんとして細胞内に蓄え、エネルギーが必要なときに使います。

 動物の組織にはどこにもグリコーゲンがあり、体内全量の3分の2は筋肉に存在します。急に運動するときのエネルギー源として働きます。残りの大部分は肝臓にあり、血糖濃度を調整しています。

 酸素に基づく代謝機構を備えた好気性生物も増殖に酸素を必要としない嫌気性生物もぶどう糖を利用します。しかも、その初期の分解過程(解糖と発酵)は同じです。発酵や解糖では、ぶどう糖の分解は不完全で、得られるエネルギーも小さいです。

 ぶどう糖が嫌気的に分解される過程を解糖(グリコリシス)と言います。厳密には1分子のぶどう糖から2分子の乳酸を生じる過程です。アルコール発酵では、ぶどう糖1分子からエタノールと二酸化炭素が各2分子できます。この代謝は酵母やある種の微生物で起こり、ぶどう糖1分子からピルビン酸2分子が生じるまでは解糖と同じです。解糖でもアルコール発酵でも、その過程で酸素は使いません。

 ぶどう糖が乳酸に変化するには、10段階の反応を経ます。最初の4反応は準備段階で、ぶどう糖はリン酸化されグリセルアルデヒド3リン酸を生じます。ここまではエネルギーを消費しますが、グリセルアルデヒド3リン酸がさらにピルビン酸に酸化されるときにエネルギーを生成します。解糖系では、グルコース1分子あたり、ATPを2分子生産しています。

生物のエネルギー源

 糖質は生物の主なエネルギー源で、人や家畜、野生動物の主な糖源は穀物でんぷん、すなわち光合成でつくられる植物性多糖です。植物は、糖がたくさんできるとでんぷんとして細胞内に蓄え、エネルギーが必要なときに使います。セルロースも植物が大量生産する構造多糖ですが、人はこれを加水分解する酵素を持たないため、食用にはなりません。

 動物の組織にはどこにもグリコーゲンがあり、体内全量の3分の2は筋肉に存在します。急に運動するときのエネルギー源として働きます。残りの大部分は肝臓にあり、血糖濃度を調整しています。ぶどう糖のほか果糖、マンノース、ガラクトースなどの単糖類やショ糖は自然界に存在し、動物の食べ物となります。

 酸素に基づく代謝機構を備えた好気性生物も増殖に酸素を必要としない嫌気性生物もぶどう糖を利用します。しかも、その初期の分解過程(解糖と発酵)は同じです。嫌気性生物は、発酵によりぶどう糖を分解し、酸素を消費せずにエネルギーを得ます。生じる化合物は、嫌気性生物にとってそれ以上利用できず、排泄するか細胞内に蓄積します。好気性生物は、嫌気性生物から発展したもので、発酵も行いますが、さらにその生成物を酸素で完全に二酸化炭素と水に酸化分解する能力を持っています。

 発酵や解糖では、ぶどう糖の分解は不完全で、得られるエネルギーも小さいですが、好気性生物では分解は完全で、得られるエネルギーははるかに大きくなります。しかし、分解は不完全でも、初期の生物は発酵により細胞に必要な分子をつくり、営んでいました。

解糖とアルコール発酵

 ぶどう糖が嫌気的に分解される過程を解糖(グリコリシス)と言います。厳密には1分子のぶどう糖から2分子の乳酸を生じる過程です。

 ぶどう糖以外の糖も解糖の中間体に変えられ、分解過程に乗ります。単糖の分解に伴い、ATP(アデノシン3リン酸)がつくられると同時にほかの代謝に用いられる中間体も生成します。ほとんどの生物は、ぶどう糖を解糖系でピルビン酸に分解します。このピルビン酸を乳酸に変えるのは1部の生物で、動物の骨格筋、乳酸菌、じゃがいもなどです。骨格筋は酸素が不十分で、ミトコンドリアは少ないですが、解凍系の酵素濃度は高いので主として解糖を行います。一方、心臓では酸素の供給が良く、ミトコンドリアが多いので乳酸はほとんどできません。大部分の組織は、酸素供給が十分であれば、ピルビン酸を経て、好気的に代謝します。

 アルコール発酵では、ぶどう糖1分子からエタノールと二酸化炭素が各2分子できます。この代謝は酵母やある種の微生物で起こり、ぶどう糖1分子からピルビン酸2分子が生じるまでは解糖と同じですが、ピルビン酸はエタノールと二酸化炭素に分解されます。

 解糖でもアルコール発酵でも、その過程で酸素は使いません。

解糖

 ぶどう糖が乳酸に変化するには、10段階の反応を経ます。最初の4反応は準備段階で、ぶどう糖はリン酸化されグリセルアルデヒド3リン酸を生じます。ここまではエネルギーを消費しますが、グリセルアルデヒド3リン酸がさらにピルビン酸に酸化されるときにエネルギーを生成します。

 ぶどう糖(グルコース)は、ATPでリン酸化されてグルコース6リン酸となり、解糖系に入ります。この酵素を触媒する酵素は、ヘキソキナーゼとグルコキナーゼです。ヘキソキナーゼは、グルコースを利用する動物細胞のすべてに存在します。動物のヘキソキナーゼは分子量100,000で、生成物となるグルコース6リン酸が酵素の活性部位以外のところに結合すると反応を阻害します。グルコキナーゼは肝臓だけに存在し、過剰の血糖をリン酸化し、グリコーゲン合成に向ける役割を持ちます。

 ヘキソキナーゼ反応では、ATPの高エネルギーリン酸を消費して、低エネルギーのグルコース6リン酸ができます。ATPの加水分解で7.3kcalが熱として遊離しますが、ヘキソキナーゼ反応でそのエネルギーの1部となる3.3kcalが低エネルギー化合物の形成に使われ、残り4.0kcalが熱として遊離します。

 次にグルコース6リン酸は、酵素のグルコースホスフェートイソメラーゼにより異性化し、フルクトース6リン酸となります。ホスホフルクトキナーゼという酵素は、ATPによるフルクトース6リン酸のリン酸化を触媒します。ヘキソキナーゼと同様にATPの高いエネルギーリン酸が、低エネルギーのフルクトース1,6ビスリン酸をつくるために利用されます。ホスホフルクトキナーゼは代謝調節に重要で、いろいろな代謝中間体が活性に影響します。すなわち、この酵素は過剰のATPやクエン酸で阻害され、フルクトース2,6ビスリン酸、AMP(アデノシン1リン酸)、ADP(アデノシン2リン酸)、フルクトース6リン酸で促進されます。フルクトース1,6ビスリン酸は、酵素のアルドラーゼにより、ジヒドロキシアセトンリン酸とグリセルアルデヒド3リン酸になります。ジヒドロキシアセトンリン酸は、そのままでは代謝されないため、トリオースホスフェートイソメラーゼという酵素で、グリセルアルデヒド3リン酸に変わり利用されます。

 グリセルアルデヒド3リン酸は、グリセルアルデヒドフォスフェートデヒドロゲナーゼという酵素で、1,3ビスホスホグリセリン酸となり、ホスホグリセレートキナーゼという酵素で3ホスホグリセリン酸になるときに、ADPをATPに変えます。ホスホグリセロムターゼという酵素で、2ホスホグリセリン酸となり、エノラーゼという酵素で2ホスホグリセリン酸が脱水されてホスホエノールピルビン酸が生じます。ピルベートキナーゼという酵素は、ホスホエノールピルビン酸のリン酸基をADPに移して、ATPとピルビン酸を生じます。

 解糖の終わりは、ラクテートデヒドロゲナーゼという酵素でピルビン酸が還元されて乳酸になる反応です。

 解糖系では、グルコース1分子あたり、ATPを2分子生産しています。

 グルコース+ATP→グルコース6リン酸+ADP

 フルクトース6リン酸+ATP→フルクトース1,6ビスリン酸+ADP

 2(1,3ビスホスホグリセリン酸+ADP→3ホスホグリセリン酸+ATP)

 2(ホスホエノールピルビン酸+ADP→ピルビン酸+ATP)

 心臓ではグルコースはピルビン酸へ、ピルビン酸はクエン酸回路(TCA回路)を経て、二酸化炭素と水へ定常的に分解されエネルギーを供給しますが、それには常に一定の酸素が必要となります。一方、筋肉は酸素がなくても急激に収縮しなければならないことが多く、その場合、酸素のいらない解糖系でATPを供給しますが、それには大量のピルビン酸を乳酸にしなければなりません。

 なお、アルコール発酵では、ピルベートデカルボキシラーゼという酵素で、ピルビン酸がアセトアルデヒドと二酸化炭素に変わり、アルコールデヒドロゲナーゼという酵素でアセトアルデヒドがエタノールとなります。

まとめ

 糖質は生物の主なエネルギー源で、人や家畜、野生動物の主な糖源は穀物でんぷん、すなわち光合成でつくられる植物性多糖です。植物は、糖がたくさんできるとでんぷんとして細胞内に蓄え、エネルギーが必要なときに使います。

 動物の組織にはどこにもグリコーゲンがあり、体内全量の3分の2は筋肉に存在します。急に運動するときのエネルギー源として働きます。残りの大部分は肝臓にあり、血糖濃度を調整しています。

 酸素に基づく代謝機構を備えた好気性生物も増殖に酸素を必要としない嫌気性生物もぶどう糖を利用します。しかも、その初期の分解過程(解糖と発酵)は同じです。発酵や解糖では、ぶどう糖の分解は不完全で、得られるエネルギーも小さいです。

 ぶどう糖が嫌気的に分解される過程を解糖(グリコリシス)と言います。厳密には1分子のぶどう糖から2分子の乳酸を生じる過程です。アルコール発酵では、ぶどう糖1分子からエタノールと二酸化炭素が各2分子できます。この代謝は酵母やある種の微生物で起こり、ぶどう糖1分子からピルビン酸2分子が生じるまでは解糖と同じです。解糖でもアルコール発酵でも、その過程で酸素は使いません。

 ぶどう糖が乳酸に変化するには、10段階の反応を経ます。最初の4反応は準備段階で、ぶどう糖はリン酸化されグリセルアルデヒド3リン酸を生じます。ここまではエネルギーを消費しますが、グリセルアルデヒド3リン酸がさらにピルビン酸に酸化されるときにエネルギーを生成します。解糖系では、グルコース1分子あたり、ATPを2分子生産しています。

タイトルとURLをコピーしました