【納得】加工食品の研究開発でも扱う「酵素」の本質

食品の加工技術
この記事は約3分で読めます。

酵素とは

 酵素は、体の中で起こるさまざまな反応に関与しています。わかりやすい例としては、ご飯を口に入れたとき、唾液に含まれるアミラーゼという酵素が、ご飯のでんぷんを消化し、体内に吸収しやすいように作用しています。老化や病気の原因となる体内に有害な活性酸素を除去するのもスーパオキシドジスムターゼという酵素です。ある空気清浄機のフィルターには、細菌を分解する溶菌酵素がコーティングされています。最近では、コロナウイルスを調べるためのPCRという方法をよく耳にしますが、ここでもポリメラーゼという遺伝子を増幅させる酵素が活躍しています。酵素は、ある特定の対象に対してのみ反応します。どんな生物も生きていくために、酵素が必要なのです。

酵素の働き

 人類にとって有益な微生物の酵素を利用した食品は、みそやしょう油、ビールなどが挙げられます。どれも微生物の酵素を用いた発酵食品です。パパイヤから取り出したパパインというたんぱく質分解酵素は、食品加工の分野では肉を柔らかくするために使用します。洗顔料にも含まれ、たんぱく質が主成分となる角質を分解します。コンタクトレンズの洗浄液中にも含まれ、レンズに付着したたんぱく質を除去してくれます。つまり、酵素は私たちの身近なところで使用されているのです。

酵素の性質

 酵素は主にアミノ酸が50個以上つながったたんぱく質です。卵や肉などのたんぱく質を多く含む食品は、加熱すると状態が変化し、冷やしてももとに戻ることはありません。同様に酵素もたんぱく質のため、加熱により構造が変化して、本来の能力を失ってしまいます。このように酵素は温度の影響をうけます。人間の場合は体温と同じ温度で最も反応が加速します。酵母などの微生物の酵素を利用する発酵食品の場合も40℃前後を維持し、反応を最大化させます。その後加熱し、酵素の状態を変化させることで、完全に反応を止めます。

 もう1つ性質は、酸性やアルカリ性の影響を受けるということです。人間の胃の中は胃酸により強い酸性であるため、胃で働くたんぱく質を分解する酵素はよく働きますが、その他の酵素はあまり能力を発揮できずに分解されてしまいます。

酵素を含むドリンクをはじめとした健康食品

 酵素を含む健康食品は数多く存在し、インターネットで手軽に購入することができます。酵素を含むサプリメントやドリンクは、それぞれの酵素の持つ働きにより体内での反応を助けることで、健康に良いといううたい文句です。しかし、特に酵素を含むドリンクによる健康増進効果には、根拠がないと消費者庁から認定されたケースも見受けられます。それは酵素ドリンクを飲んで健康が増進したというデータがない、つまりは科学的な根拠が見当たらないからです。

 酵素ダイエットについても、生の果物や野菜などを発酵させた酵素ドリンクを飲むことにより、消化や代謝に大きな影響を持つ酵素を体内にとり入いれ、代謝を上げて痩せやすいカラダを目指すという方法ですが、ドリンクは法律で加熱殺菌工程が義務付けられているため、酵素は能力を失っており、こちらについても同様に効果の根拠が不十分と推察されます。

 酵素ドリンクが、体内の消化酵素として機能しないことを知らずに利用していると考えられますので、まずは酵素の性質を正しく理解することが大切です。

医薬品としての酵素

 主としてでんぷんなどの炭水化物の消化異常症状の改善のため、ジアスターゼという酵素製剤が用いられますが、胃中において食物がまだ十分に胃液と混合し強い酸性にならないうちに作用すると考えられます。

まとめ

 生きていく上で、酵素は欠かせません。人間はアミノ酸から必要な時に必要な量の酵素を作り出すので、不足する事は基本的にありません。酵素を含む食品を摂取した場合は、体内でアミノ酸まで分解され、栄養分として利用されます。

タイトルとURLをコピーしました