【1,000気圧以上の圧力】静水圧を用いた食品の加工

食品の加工技術
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 高圧加工技術とは、食品の加工に100MPa(1,000気圧)以上の圧力を利用する技術です。

 静水圧とは、水が物体や水自体に及ぼす圧力のことです。高圧処理では、自然界には存在しないほどの高い静水圧を圧力容器内に発生させて利用しています。

 静水圧を発生させる高圧処理装置は、加圧方式によって2つに分類されます。ひとつは直接加圧方式と呼ばれ、ピストンにより圧力容器内の圧媒を直接加圧し、圧力容器内の体積を減少させることで静水圧を発生させます。もうひとつは間接加圧方式と呼ばれ、増圧機により圧力容器内に圧媒を送り込んで加圧します。

 圧力での処理においては、分子運動が抑制されるため、化学反応は原則的に促進されません。したがって、農畜水産物の新鮮な風味の低下を最小限にする加 工が可能です。また、食品を圧力媒体に 浸漬して加圧すれば、食品全体が目標圧力に到達します。よって、均一な食品の加工が可能です。

 これまでの研究において着目されてきた食品の高圧加工の特徴は、均一な圧力の伝達、ウイルスや微生物の不活性化、栄養成分、香気成分、色素成分の損耗抑制、でんぷんやたんぱく質などの食品高分子の変性、液体含浸と気泡分散の促進、貝類及び甲殻類の開脱殻などです 。

 食品の高圧加工においては、概して100~ 600 MPa の高圧力が用いられます。 1990 年代から、工業用の高圧加工装置が食品加工用として改良され、利用されるようになりました。食品加工用実用化装置には、縦型と横型とがあります。従来は縦型が主流でしたが、近年は、大容量を実現する横型が普及しつつあります。

高圧加工技術

 高圧加工技術とは、食品の加工に100MPa(1,000気圧)以上の圧力を利用する技術です。高圧処理は、熱処理と比較して栄養素の破壊や有害物質の生成、エネルギーの消費が少なく、さらに容器内全ての部位で均一な処理が可能です。

水深と静水圧

 静水圧とは、水が物体や水自体に及ぼす圧力のことです。静止している水中では、深さが10m増すごとに静水圧は0.1MPa(1気圧)ずつ増えていきます。地球上で最も深いマリアナ海溝の深さはおよそ10,000mあり、そのときの静水圧は100MPa(1000気圧)です。高圧処理では、自然界には存在しないほどの高い静水圧を圧力容器内に発生させて利用しています。

静水圧の発生方法

 静水圧を発生させる高圧処理装置は、加圧方式によって2つに分類されます。ひとつは直接加圧方式と呼ばれ、ピストンにより圧力容器内の圧媒を直接加圧し、圧力容器内の体積を減少させることで静水圧を発生させます。

 もうひとつは間接加圧方式と呼ばれ、増圧機により圧力容器内に圧媒を送り込んで加圧します。このタイプは圧力容器内の体積を変化させず、1度に処理できる容量も大きいため、生産に適しています。

 普段生活している1気圧(0.1MPa)の下では、水は0℃で氷になり、100℃で沸騰しますが、高圧下の水は異なる挙動を示します。圧力と熱は、それぞれ独立した状態変換因子であり、圧力を利用した場合、熱とは全く異なる食品の加工が可能です。

 マイナス10℃の冷凍食品に圧力をかけていくと、150MPa前後で一度溶け、400MPa前後でまた凍ります。減圧のときも同じ過程を経るので、極めて短時間で溶けること、凍ることを繰り返すことができ、菌数が減少します。つまり、高圧処理を用いることで、食品を冷凍のまま、菌数を減らすことが可能です。

高圧処理による卵の物性変化

 卵に700MPaの高圧処理を行うと、卵の殻の内外で均等な反力がかかるため、卵は割れず、外観はほとんど変わりません。

 しかし、卵の内部は固まっており、香りと栄養成分は生のままです。卵の黄身の色は鮮やかで、食感は生卵ともゆで卵とも全く異なります。このように卵の中身が固まったのは、高圧処理によりたんぱく質の変性が起こったためです。圧力処理によって変性したたんぱく質は、熱処理によって変性した場合とは物性の面で異なる状態をつくり出すことから、全く新しい食品の開発が期待されます。

実用化されている食品の高圧加工技術

 食品の高圧加工には、衝撃波を用いた動的な高圧加工と、圧力媒体で徐々に加圧してから保持後に減圧する静的な高圧加工とがあります。特に水が圧力媒体として用いられ、食品産業界で実用化されている静的な狡猾加工は、静水圧加工と呼ばれます。

 1990 年代に高圧加工によるジャムの実用化を契機として発展し、技術としては成熟しつつあります。しかしながら、加工技術として熱による加工と比べると、未解明な現象が多い分、期待も高く、それ故に解決すべき課題も多くあります。

 高圧加工技術を用いた食品製造においては、加 熱、冷却、凍結などの熱加工技術でなければできないこともある一方、高圧加工技術でしかできないこともあり、それぞれの特徴を理解する必要があります。

 食品を加熱すると、色素や香気成分などの加熱生成物が生じ、分子結合が切断されて有用成分が失われたりするなど、さまざまな化学反応が起こります。これは分子運動が活発になることで、化学反応が促進されるからです。加熱生成物は、メイラード反応により、独特 な風味と色調を呈し、それは場合によって、加熱臭として不快なにおいを発する原因になることもあります。一方、圧力での処理においては、分子運動が抑制されるため、化学反応は原則的に促進されません。したがって、農畜水産物の新鮮な風味の低下を最小限にする加 工が可能です。

 熱加工では、熱伝導の制約のため、食品を熱媒体に置いても、その中心温度が目的温度に到達するまでに一定時間が必要となります。それ故、食品の熱物性を十分に把握した上で伝熱を予測しなければ、不均一な加熱が問題となることがあります。この際に不完全な殺菌を避けるため、安全係数をかけて、必要以上に長く熱処理をすると、品質がさらに劣化します。一方、高圧加工では、食品を圧力媒体に 浸漬して加圧すれば、食品全体が目標圧力に到達します。よって、均一な食品の加工が可能です。

 これまでの研究において着目されてきた食品の高圧加工の特徴は、均一な圧力の伝達、ウイルスや微生物の不活性化、栄養成分、香気成分、色素成分の損耗抑制、でんぷんやたんぱく質などの食品高分子の変性、液体含浸と気泡分散の促進、貝類及び甲殻類の開脱殻などです 。この中で、当初から重要視されているの が、鮮度低下を抑えつつ農畜水産物の加工を行う際の微生物不活性化です。

食品の高圧加工装置

 食品の高圧加工においては、概して100~ 600 MPa の高圧力が用いられます。 1990 年代から、工業用の高圧加工装置が食品加工用として改良され、利用されるようになりました。高圧加工装置としては、上述したように高圧容器にピストンを圧入して容積を減少させて加圧する直接加圧法によるものと、高圧容器に高圧力の圧力媒体を圧入して加圧する間接加圧法によるものとがあります。食品加工用の実用化装置は、間接加圧法を採用しています。

 食品加工用実用化装置には、縦型と横型とがあります。従来は縦型が主流でしたが、近年は、大容量を実現する横型が普及しつつあります。食品の加工では、大量処理で処理費用を抑制することが重要なことから、食品の高圧加工においても、処理費用削減のために容器の大型化が望まれています。

 食品業界は、中小企業または小規模事業者数が全体の事業者数の 99.7% を占めていることから、食品の高圧加工装置のような大規模な設備投資ができない事業者がほとんどとなり、受託加工などが行われています。受託加工は、装置のみを保有する企業 が、食品企業から持ち込まれた食品を処理する業態です。中小企業への食品の高圧加工技術の普及のためには、受託加工の更なる普及が不可欠です。

まとめ

 高圧加工技術とは、食品の加工に100MPa(1,000気圧)以上の圧力を利用する技術です。

 静水圧とは、水が物体や水自体に及ぼす圧力のことです。高圧処理では、自然界には存在しないほどの高い静水圧を圧力容器内に発生させて利用しています。

 静水圧を発生させる高圧処理装置は、加圧方式によって2つに分類されます。ひとつは直接加圧方式と呼ばれ、ピストンにより圧力容器内の圧媒を直接加圧し、圧力容器内の体積を減少させることで静水圧を発生させます。もうひとつは間接加圧方式と呼ばれ、増圧機により圧力容器内に圧媒を送り込んで加圧します。

 圧力での処理においては、分子運動が抑制されるため、化学反応は原則的に促進されません。したがって、農畜水産物の新鮮な風味の低下を最小限にする加 工が可能です。また、食品を圧力媒体に 浸漬して加圧すれば、食品全体が目標圧力に到達します。よって、均一な食品の加工が可能です。

 これまでの研究において着目されてきた食品の高圧加工の特徴は、均一な圧力の伝達、ウイルスや微生物の不活性化、栄養成分、香気成分、色素成分の損耗抑制、でんぷんやたんぱく質などの食品高分子の変性、液体含浸と気泡分散の促進、貝類及び甲殻類の開脱殻などです 。

 食品の高圧加工においては、概して100~ 600 MPa の高圧力が用いられます。 1990 年代から、工業用の高圧加工装置が食品加工用として改良され、利用されるようになりました。食品加工用実用化装置には、縦型と横型とがあります。従来は縦型が主流でしたが、近年は、大容量を実現する横型が普及しつつあります。

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