【商売の基本】三方よしの考えと食品ロスでの実践

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 近江商人の「三方よし」とは、「売り手よし・買い手よし・世間よし」のことで、商売では自身の便益だけを考えるのではなく、顧客に満足してもらうと共に、社会に貢献していくということを意味します。

 近江は、琵琶湖の周辺となる滋賀県に相当する地を指す旧国名ですが、江戸から明治にかけて、数多くの大商人を輩出した地でもあります。近江商人は、上方の製品を地方に、地方の製品を上方に販売する両方向の行商が基本でした。

 行商はもとより、出店も近江出身者でかためる手法は、いやおうなく当地におけるよそもの意識を醸成することになります。それ故、適正な利益と顧客満足に加え、地域や社会への貢献がその経営理念として、深く根づいていったと考えられます。

 これはまさに現代のCSR(Corporate Social Responsibility)、すなわち、企業の社会的責任であり、事業の永続性の確保には、CSRが不可欠であるということが既にこの時代から存在していたと言えます。

 昨今では、滋賀県で近江商人が昔から大切にしていた売り手よし、買い手よし、世間よしの三方よしの精神のもと、事業者、消費者、行政などが協力して食品ロスを減らす県民運動である「三方よしでフードエコプロジェクト」に取り組んでいます。

未来に永続する事業の必須条件

 近江商人の「三方よし」とは、「売り手よし・買い手よし・世間よし」のことで、商売では自身の便益だけを考えるのではなく、顧客に満足してもらうと共に、社会に貢献していくということを意味します。

 古来より、日本においては事業の社会的意義が非常に重視されてきました。売り手よし、買い手よし、世間よしのいわゆる「三方よし」は、高島屋や伊藤忠商事など日本を代表する企業の起源とされる近江商人の経営哲学をあらわす言葉としてあまりに有名です。

 近江は、琵琶湖の周辺となる滋賀県に相当する地を指す旧国名ですが、江戸から明治にかけて、数多くの大商人を輩出した地でもあります。近江商人は、上方の製品を地方に、地方の製品を上方に販売する両方向の行商が基本でした。これはやがて卸行商、全国各地への出店を拠点にした諸国産物廻しへと発展し、さらに両替商などさまざまな事業へと多角化を遂げました。

 行商はもとより、出店も近江出身者でかためる手法は、いやおうなく当地におけるよそもの意識を醸成することになります。それ故、適正な利益と顧客満足に加え、地域や社会への貢献がその経営理念として、深く根づいていったと考えられます。近江商人の系列で伝承されている商売の十教訓にも、商売は世の為、人の為の奉仕にして、利益はその当然の報酬なりという一条があります。

 一方、江戸商人は、家業の永続が最高の目標でした。この永続の尊重によって、日本は世界一の数の長寿企業を輩出しています。

 江戸商人は、寺子屋などの教育の充実による人材育成を重視し、健全な人材開発で社会に貢献していました。また、事業永続のための仕組みをつくり、過当な競争を避けながら、健全な商行為の貢献を目指していました。

 これはまさに現代のCSR(Corporate Social Responsibility)、すなわち、企業の社会的責任であり、事業の永続性の確保には、CSRが不可欠であるということが既にこの時代から存在していたと言えます。

 近江商人、江戸商人に共通しているのは、人を大切にすることであり、人との継続的な関係を重視していることです。そして、人の集合となる社会を非常に尊重しています。

CSRと社会起業

 昨今において、CSRを果たすことは企業の必須要件となっています。CSRは、労働慣行、環境への影響、消費者の対応など社会の一員として、遵守すべき責任を果たすことです。

 CSRは、その遵守により事業の社会的存在意義を高めるものです。より直接的に社会的意義を基礎として事業開発をおこなう社会起業があります。社会起業は、社会的課題解決を目的として収益事業に取り組むことです。また、戦略論で有名なアメリカのある学者は、単に社会的責任を果たすだけでなく、企業は社会課題に取り組むことで社会と価値を共創していくことが今後の重要な戦略になるとしています。社会にとって良いことをするだけでなく、社会課題を解決しながら、企業の利益最大化を同時に図るという特徴があります。

 混沌とした環境下で、自社の生存を考えることに固執し、社会的責任を果たすことが二の次になるということは、自然なことかもしれません。しかし、長期的に見た場合、企業も社会の一部であることから、社会的責任を無視することはできません。

三方よしの概念を組み込んだ事業構想

 事業は、継続性や社会的意義を含んでいる必要があります。

 買い手よしは、どのような顧客に、どのような価値を提供するかを考えることです。これはあらゆる事業の基本的な要素となります。

 売り手よしは、売り手にとってどのような収益をもたらすのかという直接的な便益だけでなく、受け継がれている経営理念の実現への寄与、社会的認知度の向上、組織を構成する人の動機づけなどが該当します。

 世間よしは、社会的責任を果たすことと社会課題に取り組むことで社会と価値を共創していくことです。事業を社会と分離するのではなく、社会の一部として事業が果たすべき役割となります。

 事業が存続することで、雇用の創出、地域の経済への貢献、社会の課題解決につながるなどさまざまなかたちで社会に貢献することが可能となります。事業を営んでいく上で重要な資源であるヒト、モノ、カネ、情報を適切に活用することが、社会的意義を含んでいることになります。

 継続的に事業を営むこと自体が、三方よし、あるいは社会的意義を果たすことかもしれません。

 近江商人は、三方よしを実践とすることによって、よそものでありながらも信頼を獲得してきました。信頼を得た事業は、より多くの人を巻き込み、多くの価値を共創し、今なお成長を続けています。信頼が事業にとって極めて大切な資産であり、ブランディングにおいては究極の目標でもあります。事業構想で、明確な社会的意義に対する意識を持つことが、信頼醸成の第一歩となります。

三方よしのフードエコプロジェクト

 滋賀県では、近江商人が昔から大切にしていた売り手よし、買い手よし、世間よしの三方よしの精神のもと、事業者、行政などが協力して食品ロスを減らす県民運動である「三方よしでフードエコプロジェクト」に取り組んでいます。

 三方よしでフードエコプロジェクトの一環として、食品ロス削減に取り組む飲食店、宿泊施設、食料品小売店を三方よしフードエコ推奨店として登録し、滋賀県ではその取り組みを広く紹介しています。

 そもそも食品ロスとは、食べられるのに廃棄される食品のことです。2017年に日本では年間でおおよそ2,550万トンの食品廃棄物が排出され、そのうち612万トンが食品ロスと言われています。

 食品は、消費者の手元に届くまでに肥料や飼料の製造、食品を生産するための労働力、加工、包装、運搬などさまざまな工程を経ています。それにもかかわらず、食べられる食品を廃棄することは、もったいないことであるとともに、環境負荷にもつながるため大きな課題となっています。

まとめ

 近江商人の「三方よし」とは、「売り手よし・買い手よし・世間よし」のことで、商売では自身の便益だけを考えるのではなく、顧客に満足してもらうと共に、社会に貢献していくということを意味します。

 近江は、琵琶湖の周辺となる滋賀県に相当する地を指す旧国名ですが、江戸から明治にかけて、数多くの大商人を輩出した地でもあります。近江商人は、上方の製品を地方に、地方の製品を上方に販売する両方向の行商が基本でした。

 行商はもとより、出店も近江出身者でかためる手法は、いやおうなく当地におけるよそもの意識を醸成することになります。それ故、適正な利益と顧客満足に加え、地域や社会への貢献がその経営理念として、深く根づいていったと考えられます。

 これはまさに現代のCSR(Corporate Social Responsibility)、すなわち、企業の社会的責任であり、事業の永続性の確保には、CSRが不可欠であるということが既にこの時代から存在していたと言えます。

 昨今では、滋賀県で近江商人が昔から大切にしていた売り手よし、買い手よし、世間よしの三方よしの精神のもと、事業者、消費者、行政などが協力して食品ロスを減らす県民運動である「三方よしでフードエコプロジェクト」に取り組んでいます。

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