【共同体を形成し生存に適応】共生

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 微生物が動植物やほかの微生物と形成する共生的関係は、その緊密度の点で幅広く異なります。共生関係の緊密度から見ると、共生はおおまかに2つのカテゴリーに分けられます。つまり、外部共生と内部共生です。外部共生では微生物は宿主の細胞外に存在し、内部共生では宿主細胞内で生長します。

 共生は2者の間に生じる相対的な利益の点でも異なります。相利共生では両者とも共同体から利益を得ます。しかし、寄生的共生では一方は利益を得ますが、他方は何も得ることがないか、またはしばしばかなり重大な損害を受けます。

 Azolla(アカウキクサ)とAnabaena(ラン藻)の共生は、水界での窒素固定を増大させる可能性があるために、活発に研究されています。

 樹木の木部組織は主としてセルロースとリグニンからなり、大部分の動物にとって炭素源として利用されません。すなわち、一般に動物はこれらの重合体を分解するために必要な酵素を有していません。それにもかかわらず、昆虫の多数は、セルロースやリグニンを消化する微生物との外部共生関係によって、木材をその主要な食べ物としています。

 反芻動物は、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ラクダ、キリンを含む草食性哺乳類の一群です。ほかの哺乳類と同様に反芻動物は、セルラーゼを合成できません。しかし、この群は微生物との外部共生を営むようになり、それによってセルロースを主要な炭素源とすることで生存しています。

 反芻動物の消化管は、4つの連続した胃です。最初の2つはルーメンと呼ばれ、本質的には細菌と原生動物の詰まった大きな培養容器です。ウシのルーメンは、容量約100Lの袋です。ウシが摂取した植物は多量の唾液と混合されてルーメンに送られ、そこで細菌や原生動物によって速やかに分解を受けます。ルーメンで起こる微生物の過程はすべて嫌気的です。植物は主にセルロース、ペクチン、でんぷんなどです。セルロースの分解は、ルーメンの主要な消化過程で、ルーメン微生物の1~5%がセルロース分解性です。

共生の型

 微生物が動植物やほかの微生物と形成する共生的関係は、その緊密度の点で幅広く異なります。共生関係の緊密度から見ると、共生はおおまかに2つのカテゴリーに分けられます。つまり、外部共生と内部共生です。外部共生では微生物は宿主の細胞外に存在し、内部共生では宿主細胞内で生長します。しかし、この区分は必ずしも明確ではありません。菌類は相手となる藻類の細胞壁には侵入しますが、細胞膜には侵入しません。

 共生は2者の間に生じる相対的な利益の点でも異なります。相利共生では両者とも共同体から利益を得ます。しかし、寄生的共生では一方は利益を得ますが、他方は何も得ることがないか、またはしばしばかなり重大な損害を受けます。

 2種類の生物が共生関係を発達させたという事実は、少なくともどちらか一方は、その関係から利益を得ることを意味しています。生物が生存するために共生に依存する程度はかなり多様です。

アカウキクサとアナベナの共生

 Azolla(アカウキクサ)とAnabaena(ラン藻)の共生は、水界での窒素固定を増大させる可能性があるために、活発に研究されています。

 Azollaは熱帯や温帯の止水の表面に生育し、その葉の下部表面には常に粘質物を含むくぼみがあって、その中に共生者のラン藻アナベナが存在します。生長の過程で、新しい葉にそれぞれラン藻の連鎖体が古い葉のくぼみから移動してくることによって、新しい葉は接種を受けています。

 ラン藻アナベナはニトロゲナーゼの合成を担い、Azollaはラン藻を好適な光エネルギーに向け、栄養物を供給します。ラン藻は植物に固定した窒素を供給します。

 水面に著しく繁殖したAzolla-Anabaebaは、マメ科植物根粒細菌によって固定される窒素の量に匹敵するほどの窒素を固定できます。ベトナムやタイでは何世紀も前から飼料や肥料として、Azolla-Anabaebaを栽培してきたことから、この窒素固定は農業上かなり重要です。

シロアリとキゴキブリの腸内鞭毛虫

 樹木の木部組織は主としてセルロースとリグニンからなり、大部分の動物にとって炭素源として利用されません。すなわち、一般に動物はこれらの重合体を分解するために必要な酵素を有していません。それにもかかわらず、昆虫の多数は、セルロースやリグニンを消化する微生物との外部共生関係によって、木材をその主要な食べ物としています。

 シロアリもキゴキブリも共通の祖先群から進化したもので、ともの木材を食べる若干の種を含みます。木材を食べる種は、すべてその消化管内に莫大な数の特殊な鞭毛虫類を宿しています。鞭毛虫は後腸の袋状に拡張した部分の中に密な集団として詰め込まれています。鞭毛虫は昆虫の体重の3分の1以上を占めるといった報告もあります。鞭毛虫は昆虫自身では利用できないセルロースの消化を担っています。一方、鞭毛虫はそれ自身細胞内細菌の宿主であり、鞭毛虫がつくるセルラーゼは、すべてではないにしても、その一部はこれら細胞内共生菌に由来しています。

 窒素固定もシロアリ腸管で起こりますが、窒素固定細菌の活性によるものです。なお、これらの細菌が腸管内で自由生活を営んでいるのか、あるいは鞭毛虫の細胞内共生者として存在しているのかは不明です。

反芻動物の共生

 反芻動物は、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ラクダ、キリンを含む草食性哺乳類の一群です。ほかの哺乳類と同様に反芻動物は、セルラーゼを合成できません。しかし、この群は微生物との外部共生を営むようになり、それによってセルロースを主要な炭素源とすることで生存しています。

 反芻動物の消化管は、4つの連続した胃です。最初の2つはルーメンと呼ばれ、本質的には細菌と原生動物の詰まった大きな培養容器です。ウシのルーメンは、容量約100Lの袋です。ウシが摂取した植物は多量の唾液と混合されてルーメンに送られ、そこで細菌や原生動物によって速やかに分解を受けます。ルーメンの全微生物数は、1mlあたり1010個です。

 多数の異なった微生物が存在しますが、その生化学的活性はまだ詳細には理解されていません。しかし、全体としての効果は明らかです。つまり、摂取された飼料中のセルロースやほかの複雑な炭水化物は分解されて、最終的には酢酸、プロピオン酸、酪酸などの脂肪酸と二酸化炭素あるいはメタンになります。脂肪酸はルーメンの壁を通過して血液とともに体のさまざまな組織を循環し、そこで酸化分解されます。ウシは頻繁にゲップを出して、ルーメンで生成されたガスを放出します。ルーメンの微生物集団は増殖が速く、微生物は未消化の植物とともにウシの消化管の後部に送られます。ルーメン自体は消化酵素をつくりませんが、後部の胃はプロテアーゼを分泌し、ルーメンからくる微生物を分解し、消化します。その結果、窒素化合物やビタミンなどはウシによって吸収されます。この理由から、ウシや反芻動物の窒素要求性はほかの哺乳動物よりもずっと単純です。人やネズミは、すでに形成されて食べ物に存在する多くのアミノ酸を要求しますが、反芻動物はアンモニアまたは尿素で生育できます。これらの簡単な窒素化合物は、ルーメン微生物によりたんぱく質に変換されます。

 ルーメンで起こる微生物の過程はすべて嫌気的です。反芻動物が摂食すると、粉砕された植物は唾液と混合されて、ルーメンに到達します。植物は主にセルロース、ペクチン、でんぷんなどです。セルロースの分解は、ルーメンの主要な消化過程で、ルーメン微生物の1~5%がセルロース分解性です。ルーメンで消化されないのはリグニンだけです。

まとめ

 微生物が動植物やほかの微生物と形成する共生的関係は、その緊密度の点で幅広く異なります。共生関係の緊密度から見ると、共生はおおまかに2つのカテゴリーに分けられます。つまり、外部共生と内部共生です。外部共生では微生物は宿主の細胞外に存在し、内部共生では宿主細胞内で生長します。

 共生は2者の間に生じる相対的な利益の点でも異なります。相利共生では両者とも共同体から利益を得ます。しかし、寄生的共生では一方は利益を得ますが、他方は何も得ることがないか、またはしばしばかなり重大な損害を受けます。

 Azolla(アカウキクサ)とAnabaena(ラン藻)の共生は、水界での窒素固定を増大させる可能性があるために、活発に研究されています。

 樹木の木部組織は主としてセルロースとリグニンからなり、大部分の動物にとって炭素源として利用されません。すなわち、一般に動物はこれらの重合体を分解するために必要な酵素を有していません。それにもかかわらず、昆虫の多数は、セルロースやリグニンを消化する微生物との外部共生関係によって、木材をその主要な食べ物としています。

 反芻動物は、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ラクダ、キリンを含む草食性哺乳類の一群です。ほかの哺乳類と同様に反芻動物は、セルラーゼを合成できません。しかし、この群は微生物との外部共生を営むようになり、それによってセルロースを主要な炭素源とすることで生存しています。

 反芻動物の消化管は、4つの連続した胃です。最初の2つはルーメンと呼ばれ、本質的には細菌と原生動物の詰まった大きな培養容器です。ウシのルーメンは、容量約100Lの袋です。ウシが摂取した植物は多量の唾液と混合されてルーメンに送られ、そこで細菌や原生動物によって速やかに分解を受けます。ルーメンで起こる微生物の過程はすべて嫌気的です。植物は主にセルロース、ペクチン、でんぷんなどです。セルロースの分解は、ルーメンの主要な消化過程で、ルーメン微生物の1~5%がセルロース分解性です。

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