【生体の活力に着目】漢方と薬膳

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多くの側面を持つ漢方と薬膳

 漢方というと一般には、漢方薬および漢方薬を用いた治療法と考えられていますが、広くは鍼灸や按摩、気功法、薬膳などもその範囲に含まれます。漢方薬による療法は薬を煎じた液体を飲むことから湯液療法と呼ばれています。

 漢方という名前の由来は、明治時代以降のことで、それ以前は医学といえばすべて漢方でした。明治時代になって、西洋医学が本格的に日本へもたらされ、それまでの医学と区別する意味で、漢方と呼ばれるようになりました。この医学体系が完成したのが、中国の漢の時代であったため、この名前が付けられました。

 湯液療法とは、古くは煎じ薬を用いる治療法のすべてを指していました。しかし、今では漢方薬から抽出されたものも含めて考えられています。漢代以降いくつかの流派が生まれましたが、日本漢方では、現在3つの流派が残っています。ひとつは、後漢の時代に張仲景によって著された傷寒論を基本とするグループで、これを古方派と言います。もうひとつは、金元時代に生まれた医学を中心とするグループでこれを後世派と言います。古方派の方が古いですが、日本に伝播した順序は逆となります。最後のひとつは、この両者の考えを折衷した折衷派です。なお、現在はこれらのほかに中医学が加わっています。

 鍼灸療法は、中国の戦国時代には既に存在していた非常に古い治療法です。特に灸療法は、孟子の中にも見受けられます。具体的には、体表にあるツボを鍼または灸で刺激することで気を動かし、その気が経路を伝播して、内臓およびその他の器官を調和させるという方法です。その基本となる考え方を臓腑経絡説といい、陰陽五行説と深い関連を持っています。

 按摩療法は、鍼や灸を使うことなく、ツボや経絡を手で揉んだり押したりすることによって、気を動かし、体を調和させる方法です。一見、西洋のマッサージ療法と似ていますが、ツボや経絡を重視することが特徴です。

 気功療法は、最近になって使われるようになりましたが、その起源は古く、導引法などと呼ばれていました。呼吸法を中心にゆったりとした運動法を加え、体内の気をめぐらすことを目的としています。

 薬膳療法も気功と並んで新しい用語です。1980年代に中国は四川省成都に開店した同仁堂薬舗が初めて用いました。この考え方自体の起源は古く、周の時代までさかのぼります。基本は食事療法で、それに漢方薬を加えたものを薬膳と呼んでいます。薬膳には3つの段階があります。食養は、食事療法によって病気を予防することです。食療は、食べ物の中の薬的な側面を生かし、食べ物で治療することです。薬膳は、食療にさらに純然たる漢方薬を加味したものを指します。そして、この3段階によっても病気が治らないとき、湯液療法を用います。したがって、当然漢方薬を服用する際には、食事療法との併用が極めて大切となります。

西洋医学との違い

 西洋医学も19世紀までは、主薬にほとんど薬草を用いていたので、見た目にはあまり漢方と変わるものではありませんでした。

 ところが、19世紀後半になって科学が発達し、その影響を受けるようになると、細胞や細菌の概念が確立し、医学体系そのものに大きな変化が生じました。

 西洋医学の長所は、細菌感染に対する予防衛生の概念を広めたことと抗生物質の発見により、細菌性の疾患を減少させたことです。ここに至って、西洋医学と漢方との相違が決定的になってきました。西洋医学と漢方は、ともに原因療法を標ぼうしていますが、両者のもっとも大きい相違点は、西洋医学が病気の原因である細菌に目標を絞り、それを死滅させることに主眼を置くのに対し、漢方では病原菌よりも生体の活力を増し、いかに健康体としての調和をとるかに力点を置いているところです。

民間薬との違い

 民間薬もその起源をたどれば、多くは漢方薬の仲間です。両者の違いは、漢方薬ではひとつの生薬は一定の法則のもとに他の薬と組み合わされ、厳密な運用法のもとに用いられますが、民間薬では、ドクダミにしろ、ゲンノショウコにしろ、ひとつの生薬が単独で、しかも経験的に用いられ、他の薬と組み合わされることはほとんどありません。

 したがって、民間薬を使う民間療法は、漢方でいう運用法などの概念によって用いられるのではなく、下痢や頭痛といったひとつの症候によって、大ざっぱに運用されています。

まとめ

 漢方というと一般には、漢方薬および漢方薬を用いた治療法と考えられていますが、広くは鍼灸や按摩、気功法、薬膳などもその範囲に含まれます。漢方薬による療法は薬を煎じた液体を飲むことから湯液療法と呼ばれています。

 薬膳療法の考え方自体の起源は古く、周の時代までさかのぼります。基本は食事療法で、それに漢方薬を加えたものを薬膳と呼んでいます。薬膳には3つの段階があります。食養は、食事療法によって病気を予防することです。食療は、食べ物の中の薬的な側面を生かし、食べ物で治療することです。薬膳は、食療にさらに純然たる漢方薬を加味したものを指します。そして、この3段階によっても病気が治らないとき、湯液療法を用います。したがって、当然漢方薬を服用する際には、食事療法との併用が極めて大切となります。

 西洋医学と漢方のもっとも大きい相違点は、西洋医学が病気の原因である細菌に目標を絞り、それを死滅させることに主眼を置くのに対し、漢方では病原菌よりも生体の活力を増し、いかに健康体としての調和をとるかに力点を置いているところです。

 民間薬と漢方薬の違いは、漢方薬ではひとつの生薬は一定の法則のもとに他の薬と組み合わされ、厳密な運用法のもとに用いられていることです。

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