【和菓子のノウハウを流用】あずきを使ったアイスの開発

食品の開発
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 井村屋は、1963年にアイス市場に参入しました。しかし、この市場は大手乳製品メーカーの牙城であり、なかなか切り崩すことができません。

 太刀打ちできるアイス製品を開発するため、社内に蓄積されていた他社に負けない技術を抽出すると、井村屋には創業の明治期から蓄積してきたあずきを加工する技術がありました。この技術とは、創業から和菓子を生業にしてきたことによる、あずきを柔らかく炊く技術です。

 あずきを炊くには。数多くの手間とノウハウが必要になります。前日からあずきを水に浸し、煮出す工程と灰汁を除くために水を交換する工程が何度も繰り返されます。それだけでなく、あずきは農作物のため、産地や天候などの影響でそれぞれにバラつきがあります。小豆の状態を見ながら、火加減、圧力、炊き時間、砂糖を投入するタイミングを調整する必要があります。中でも1番難しいのが、砂糖を投入するタイミングです。煮えたあずきに砂糖を入れると、浸透圧で豆の水分が煮汁に出てしまい、現状より柔らかくなりません。また、それ以上炊いてしまうと、あずきが割れて中が出てしまうことから、小豆の柔らかさがギリギリの状態で砂糖を入れる必要があります。タイミングを見計らうには、職人技のような長年の経験が求められます。欠くことのできない知見、ノウハウ、工程をライン化する土壌が明治時代から和菓子をつくり続けてきた井村屋にはありました。

 原材料は、あずき、砂糖、コーンスターチ、食塩、水あめといったシンプルな配合だからこそ、味つけで手を抜くと、丁寧に炊いたあずきが台無しになってしまいます。そのため、砂糖の甘さが過度に引き立たないように、甘さが後に引かず、さらにもう一本食べたくなるような飽きのこない味を追求しています。

 あずきバーは、昔と比べると固くなっています。これは、嗜好の変化に伴い甘さを調整してより控えた結果、水分量が増え、水分が凍結して氷になる割合も増加することで、固さが以前よりも増しているからです。さらに乳化剤や安定剤といった食品添加物を使用していない、乳固形分が入っていない、空気の含有量が少ないことも固さの理由です。

 あずきバーは敢えて固くしているわけではなく、当初の着想とシンプルな原材料を追求した結果、自然と固くなっています。

アイス市場への参入

 井村屋は、1963年にアイス市場に参入しました。しかし、この市場は大手乳製品メーカーの牙城であり、なかなか切り崩すことができません。この市場で他社に勝る製品とは何でしょうか。井村屋は、明治時代となる1896年に創業しており、当時から蓄積してきたあずきを加工するノウハウがありました。

 井村屋のあずきバーは、存在感のあるあずきに加え、とてもしっかりとした歯ごたえと甘すぎない程よい後味の良さが人気を博し、年間2億本以上の販売を記録しています。1973年に発売したあずきバーの原材料は、あずき、砂糖、水あめをはじめとしたシンプルなレシピです。時代の変化に合わせて、甘さの微調整はしているものの、配合に大きな変化はないようです。にもかかわらず、あずきバーは売上高でおおよそ20%を占める主力製品にまで成長しました。この成長を実現したのは、明治時代から和菓子をつくり続けることで蓄積されていった和菓子の加工技術でした。

あずきを使ったアイスの開発

 太刀打ちできるアイス製品を開発するため、社内に蓄積されていた他社に負けない技術を抽出すると、井村屋には創業の明治期から蓄積してきたあずきを加工する技術がありました。この技術とは、創業から和菓子を生業にしてきたことによる、あずきを柔らかく炊く技術です。

 あずきを使うアイス製品の開発に着手したのは1972年頃で、特色のある製品にするため、差別化の意味もあり、敢えて乳製品を使わない配合にしています。

 あずきを炊くには。数多くの手間とノウハウが必要になります。前日からあずきを水に浸し、煮出す工程と灰汁を除くために水を交換する工程が何度も繰り返されます。それだけでなく、あずきは農作物のため、産地や天候などの影響でそれぞれにバラつきがあります。小豆の状態を見ながら、火加減、圧力、炊き時間、砂糖を投入するタイミングを調整する必要があります。

 中でも1番難しいのが、砂糖を投入するタイミングです。煮えたあずきに砂糖を入れると、浸透圧で豆の水分が煮汁に出てしまい、現状より柔らかくなりません。また、それ以上炊いてしまうと、あずきが割れて中が出てしまうことから、小豆の柔らかさがギリギリの状態で砂糖を入れる必要があります。タイミングを見計らうには、職人技のような長年の経験が求められます。欠くことのできない知見、ノウハウ、工程をライン化する土壌が明治時代から和菓子をつくり続けてきた井村屋にはありました。

 井村屋がこだわったあずきを柔らかく炊く技術は、あずきバーに含まれるあずき粒量に反映されています。1本のあずきバーには、おおよそ100個のあずきが使われています。粒を残すために、ひと粒ひと粒を大事に炊いているからこそなせるわざです。

 1973年に発売された当時のあずきバーは、30円でした。こだわったのは、あずきを柔らかく炊く技術だけではなく、あずきバーをよく見ると、中に入った小豆の粒が均等に散りばめられています。アイスの原液をそのまま凍らせると、当然ながら比重の重いあずきの粒は沈殿してしまいます。これを防ぐために、井村屋はアイデアをしぼりだし、アイスの原液を撹拌しながら凍らせる製法を採用しています。

 原材料は、あずき、砂糖、コーンスターチ、食塩、水あめといったシンプルな配合だからこそ、味つけで手を抜くと、丁寧に炊いたあずきが台無しになってしまいます。そのため、砂糖の甘さが過度に引き立たないように、甘さが後に引かず、さらにもう一本食べたくなるような飽きのこない味を追求しています。

 商品名は、原材料をダイレクトに訴求できるようにあずきバーに決定し、1973年にあずきバーとして発売されました。

冷蔵庫の普及による市場の成長と安定供給の実現

 あずきバーに限らず、アイス製品は家庭用冷蔵庫の普及とともに、売り上げを伸ばしていました。1976年には冷蔵庫の普及率は100%となっています。

 家庭での冷蔵庫の普及にあわせ、井村屋は1979年に箱入りタイプのBOXあずきバーを発売し、着実に売り上げを伸ばしています。

 工場には、効率的に凍結させる設備を導入しています。冷却液をアイスの金型に直接吹きかけるため、従来では凍結に10分以上かかっていましたが、今では7分以内に短縮できるようになっています。これで夏場の需要期に安定供給が実現しています。また、知的財産戦略も抜かりなく、2013年にはあずきバーで商標登録しています。

 あずきバーの現在の主な購買層は、40~50代の主婦です。今後は20~30代の女性までターゲットを拡大させるために、さまざまな販売促進活動を行い需要喚起に努めています。この層は後に母親になる年代です。井村屋は、日本文化と関係の深いあずきを使ったあずきバーが世代間で受け継がれるような取り組みをさらに加速させています。

あずきバーの固さ

 井村屋のホームページのあずきバーの製品ページを見ると、「固く凍っているため、歯を痛めないようにご注意ください」と記載されています。

 以前は、刃物で知られる岐阜県関市のふるさと納税の返礼品にも選ばれています。あずきバーと日本刀に共通するかたさが縁で、実現しました。

 あずきバーは、昔と比べると固くなっています。これは、嗜好の変化に伴い甘さを調整してより控えた結果、水分量が増え、水分が凍結して氷になる割合も増加することで、固さが以前よりも増しているからです。さらに乳化剤や安定剤といった食品添加物を使用していない、乳固形分が入っていない、空気の含有量が少ないことも固さの理由です。

 もともとぜんざいをそのままアイスにするという発想でつくられているため、原材料は小豆、砂糖、コーンスターチ、食塩、水あめの5種類のみで、食感に影響する乳製品や食品添加物を使っていません。そもそもシンプルな原材料でつくることにこだわり、あずきなどをぎっしり詰め込んだ結果、空気の泡が少なくなり、固くなっています。

 あずきバーは敢えて固くしているわけではなく、当初の着想とシンプルな原材料を追求した結果、自然と固くなっています。

まとめ

 井村屋は、1963年にアイス市場に参入しました。しかし、この市場は大手乳製品メーカーの牙城であり、なかなか切り崩すことができません。

 太刀打ちできるアイス製品を開発するため、社内に蓄積されていた他社に負けない技術を抽出すると、井村屋には創業の明治期から蓄積してきたあずきを加工する技術がありました。この技術とは、創業から和菓子を生業にしてきたことによる、あずきを柔らかく炊く技術です。

 あずきを炊くには。数多くの手間とノウハウが必要になります。前日からあずきを水に浸し、煮出す工程と灰汁を除くために水を交換する工程が何度も繰り返されます。それだけでなく、あずきは農作物のため、産地や天候などの影響でそれぞれにバラつきがあります。小豆の状態を見ながら、火加減、圧力、炊き時間、砂糖を投入するタイミングを調整する必要があります。中でも1番難しいのが、砂糖を投入するタイミングです。煮えたあずきに砂糖を入れると、浸透圧で豆の水分が煮汁に出てしまい、現状より柔らかくなりません。また、それ以上炊いてしまうと、あずきが割れて中が出てしまうことから、小豆の柔らかさがギリギリの状態で砂糖を入れる必要があります。タイミングを見計らうには、職人技のような長年の経験が求められます。欠くことのできない知見、ノウハウ、工程をライン化する土壌が明治時代から和菓子をつくり続けてきた井村屋にはありました。

 原材料は、あずき、砂糖、コーンスターチ、食塩、水あめといったシンプルな配合だからこそ、味つけで手を抜くと、丁寧に炊いたあずきが台無しになってしまいます。そのため、砂糖の甘さが過度に引き立たないように、甘さが後に引かず、さらにもう一本食べたくなるような飽きのこない味を追求しています。

 あずきバーは、昔と比べると固くなっています。これは、嗜好の変化に伴い甘さを調整してより控えた結果、水分量が増え、水分が凍結して氷になる割合も増加することで、固さが以前よりも増しているからです。さらに乳化剤や安定剤といった食品添加物を使用していない、乳固形分が入っていない、空気の含有量が少ないことも固さの理由です。

 あずきバーは敢えて固くしているわけではなく、当初の着想とシンプルな原材料を追求した結果、自然と固くなっています。

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